棘ある花も愛されたい
わたしは、幼い頃に両親が離婚しており、母はわたしが14歳の時に再婚した。
それから自分の家のはずなのに、居心地が悪くなってしまった自宅は、わたしの居場所ではなく、母と継父の家のようになってしまっていたのだ。
その為、わたしは自分が居場所が欲しかった。
そして高校を卒業と共に就職し、実家を出たわたしだったが、その就職先では人間関係に悩み2年で退職してしまった。
次の転職先は居酒屋で、わたしはその職場で諒祐と出逢った。
相変わらずコミュニケーションが壊滅的なわたしだったが、そんなわたしに声を掛け、仲良くしてくれた諒祐に惹かれるのに、それほど時間はかからず、いつの間にかわたしたちは一緒に居るようになった。
今思えば、告白の言葉はなかった。
ただ、自然な流れで二人で過ごすようになり、手を繋ぎ、お互いを求め合うようになっていった。
諒祐とは、同棲をしていたわけではないが、わたしの家で半同棲状態ではあった。
当たり前のように諒祐は、わたしの家に居着いていた。
そんな事が8年続いて、わたしはこの先もずっと、諒祐と一緒に過ごしていくものだと思っていた。
諒祐が居るところが、わたしの居場所だと思っていた。
それがこんな事になり、わたしの心には大きな穴がぽっかりと空いたような状態になっているのだ。
「あ、そういえば、土倉さんって···、彼氏はいるんですか?」
思わぬ青佐くんからの質問に「えっ?」と声が裏返る。
わたしはその質問に動揺しながらも「んー、居たけど···、今は居ない、かな。」と答えた。
「あ、じゃあ···、俺にも、チャンスありますか?」
青佐くんの言葉が一瞬理解出来なかったわたしは、キョトンとしながら青佐くんを見上げる。
すると青佐くんは、目を泳がせながら「あ!いや!い、今の聞かなかった事にしてください!すいません!俺、調子に乗りました!」と、一人で慌てふためき、そんな様子にわたしはクスッと小さく笑ってしまった。
「今の俺には、こうして、土倉さんと一緒に並んで歩けるだけで、充分です。」
そう言い、照れ笑いを浮かべる青佐くんは爽やかだった。
そんな青佐くんの気持ちは嬉しかったが、今のわたしに青佐くんの気持ちを受け止められる余裕はなかった。
だから、わたしは青佐くんの気持ちに気付かない振りをした。
「青佐くんのお陰で帰り道も安全だね。」
そんな事を言って誤魔化す事しか、今のわたしには出来ないのだった。