嘘つきな患者と、私の先生。

始まり

「ねぇ菜月、今度合コンあるんだけど来てほしいの」


「やだ」

スマホ見たまま、軽く返す。


「お願い〜!!ほんとに人数足りないの!」


「他あたってよ」


「菜月がいいの!」


「なんで」


「だって菜月いると安心するんだもん!」


「……なにそれ」

ちょっとだけ笑いそうになるのを堪える。


横で紗良が小さく息をつく。



「はい出た、それ」



「なにが」


「菜月専用の口説き文句」


「違うし!」


「毎回それで落ちてる」


「落ちてない」


「落ちてる」


「……うるさい」


紗良がぐいっと腕にしがみつく。


「お願いお願いお願い〜!」


「ちょ、重いって…」


「今回ほんとにいい人たちなの!」


「毎回言ってる」


「今回はほんとに!」


「信用ない」


紗良がぼそっと言う。

「飲まなくていいからさぁ…お願い…」


少しだけトーンが落ちる。
上目遣い。


「……」


(ずるい)


「今回だけでいいの…」

小さく言われる。

「……はぁ」ため息。


「そういう言い方するの、ずるい」


「え」


「断れないじゃん」

「じゃあ来てくれる?!」

「……顔出すだけ」


「やったーー!!」


「ほんとにちょっとだけだからね」


「うんうん!」


紗良が横で小さく笑う。


この時はまだ、

ただの“付き合い”のつもりだっ
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