初恋が始まるとき。
─────Side Yuna.


 朝10時、人間も鳥も虫も活発に活動をしている時間帯なのかもしれないが、私という自堕落な人間はまだベッドの上で休暇を満喫していた。

 会社だと時間に迫られることも無く、枕に顔を埋めながら眠る休日。なんて幸せな…、と浸っている時に、その休暇を邪魔する不穏なメロディーがスマートフォンから流れる。

 休暇において私の嫌いなものは、スマートフォンの着信音である。今はLINE電話の音が流れているがLINE電話も同様に嫌いだ。だけれど、父や母や、時折結愛さん、紬さんからも連絡が来るので通知をオフにはできないところが苦しい。

 いつもの調子で画面も見ず、勘で画面をスライドさせ音が止んだのを確認すると、そのまま耳に当て「こちら佐々木。本日の営業は終了いたしました~」と何の営業かも知らないが、気の抜けた情けない声で言い放つ。

 するとその後、想像していた人間には誰も当てはまらない人物の声が聞こえてきた。


『おはよ、お寝坊さん』

「………あ?」

『あ?はやめような』


 仕事最終日に脇腹を攻撃し、悶絶していたのを置いていった男の声が聞こえ、思わず固まった。もうこの休暇中にこの男の声を聞くことなんてないと思っていたのに。


「なんですか。精算ならしませんよ」

『ゴールデンウィークにまで仕事してると思われてんの?俺』


 そう言いながら笑っている渋谷さんに、うまく会話ができなかった。どうして急に電話なんてかけてくるんだ。
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