地味なカフェ店員ですが一夜の相手が社長で溺愛されています
「そういえば、社長って彼女いるのかな」

ふと、そんな声が聞こえた。

思わず、手が止まりそうになるのをこらえる。

「仕事忙しいって言ってたよね」

「うん。女性に興味なさそうじゃない?」

軽い調子で交わされる会話。

それなのに、胸の奥がざわつく。

「でもさ――」

一人が、少しだけ声を潜めた。

「ここだけの話、社長って前にモデルと付き合ってたんだって」

その一言で、完全に手が止まった。

持っていた皿を拭く布巾が、指の中で止まる。

「え、ほんと?」

「うん。結婚寸前までいったらしいよ」

「えー……すごい」

驚きと興味が混ざった声。

それが、やけに遠く感じる。結婚寸前。

その言葉だけが、妙にはっきりと耳に残る。
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