地味なカフェ店員ですが一夜の相手が社長で溺愛されています

6章 プロポーズ

高貴が店に来なくなってから、数日が過ぎた。

あれだけ張り詰めていた空気が、嘘みたいに静かに戻っている。

「いらっしゃいませ」

いつものように声を出す。

コーヒー豆を挽き、丁寧にドリップする。

変わらない日常。

でも――少しだけ、違う。

前はただ「仕事」だったこの場所が、今はちゃんと「自分の居場所」だと感じられる。

カップを手に取りながら、ふと気づく。

誰かに否定されるための場所じゃない。

比べられる場所でもない。

私は、ここでいい。

そう思えるようになっていた。

「……いい香りですね」

不意に、聞き慣れた声がする。

顔を上げると、そこには悠生さんがいた。

変わらない、穏やかな佇まい。

それだけで、自然と心がほどける。
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