地味なカフェ店員ですが一夜の相手が社長で溺愛されています
「いらっしゃいませ」

いつも通り声をかけるけれど、心臓は少しだけ速くなる。

「こんばんは」

変わらない穏やかな声。

それだけで、空気がやわらぐ。

彼はいつもの席に座る。

その様子を、周りのお客さんがちらりと見るのがわかる。

「いつもの、でよろしいですか」

「ええ、お願いします」

短いやり取り。

それだけなのに、視線が集まる。

コーヒーを淹れて、カップを運ぶ。

「お待たせしました」

「ありがとうございます」

指先が触れそうな距離。

それだけで、少しだけ緊張する。

その時、近くの席にいた女性が、少し大きめの声で話し始めた。

「いいなあ、ああいうの」

わざと聞こえるような言い方。

「ちゃんと通ってくれる人って、素敵じゃない?」

くすくすと笑う声。

視線が、こちらに向けられる。
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