万華鏡は月を巻き戻す
羽瑠が体育倉庫に閉じ込められたとき――
胸が張り裂けそうだった。

どこで俺は間違えたんだ。
どうして彼女がこんな目に遭わなきゃいけない。

焦りで頭が真っ白になっていたとき、
遠くで笛の音が聞こえた。

――あっちだ。

気づいた瞬間、迷わず駆け出していた。
天窓を破って飛び込んだ先に、
羽瑠がいた。

無事だ。
それだけで膝が崩れそうだった。

誰かの悪意で羽瑠が傷つけられるなんて、
絶対に許されない。


夏休みに入ってすぐ、
俺は黒木雅信院長のもとを訪ねた。

「羽瑠のこと、知ってますよね。
亡くなった娘さんに…そっくりな。」

院長は眉をひそめた。

「ああ。だからどうした?」

「俺、未来から来たんです。」

「何をバカなことを…。
冷やかしなら帰りなさい。」

立ち上がろうとした院長に、
俺は静かに言った。

「これ、見てください。
俺、あなたに手術してもらったんですよ。」

シャツをめくり、下腹部の傷跡を見せる。

院長の目がわずかに揺れた。

「それは…。」

「海外でも名の知れた名医のあなたならわかるはずです。
こんなに綺麗に縫える人は、そう多くない。」

院長はしばらく黙り込み、
深く息を吐いた。

「…確かに。」

その瞬間、
俺の覚悟はようやく伝わった気がした。

羽瑠を守るためなら、
どんな手でも使う。
どれだけ嫌われても構わない。

それが、俺にできる唯一のことだから。
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