万華鏡は月を巻き戻す
「その言葉……確かに僕が言いそうだな。」

黒木は薄く笑った。
その笑みは、どこか壊れた静けさをまとっている。

朔は私の前に立ち、微動だにしない。

「でも、君たち二人を“消せば”……関係ないよね?」

その一言で、空気が一気に冷えた。

朔は低く、しかし揺るぎない声で言う。

「そんなこと、させると思うか。
もう手は打ってある。
あんたが俺たちに何かしたら――その瞬間、全部が明るみに出る。」

黒木の目が細くなる。

「へぇ。すごいな。
でも……そう簡単にいくかな?」

黒木がポケットに手を入れた瞬間、
朔は私を後ろへ押しやり、黒木との距離を一気に詰めた。

床に響く音。
黒木は驚いたように息を呑む。

「はは……すごいね、君。」

朔は息を整えながら言う。

「何の準備もなしに来るわけないだろ。
護身術も、対応も、一通りやってきた。
羽瑠を守るために。」

そして、スマホの画面を黒木に向けて見せる。

「それに――今までの会話、全部録音してある。」

黒木の目が大きく見開かれた。

その瞬間、
彼の中で何かが“止まった”ように見えた。
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