万華鏡は月を巻き戻す

「羽瑠、大丈夫だった?」

「平気。」

「で、あいつ……なんだって?」

「別に何も。あ、3日前に彼女とは別れたんだって。」

「ふーん。まあ、思ったより続いたか。
 それよりも油断も隙もないな。
 ……これも全部、羽瑠が可愛すぎるせいだ。」

朔が真面目な顔で言うから、思わずむっとする。

「そういう朔こそ。」

「なに?」

小首をかしげる仕草が、ちょっとずるい。

「さっきナンパされてたじゃん。
きれいなお姉さんたちに」

「あー、見てたんだ。」
朔はあっさり笑う。

「まあ、羽瑠が一番きれいだから大丈夫。」

「……なにがよ。」

ため息が漏れる。
なのに朔は、こちらの反応を楽しむみたいに目を細めた。


二人で焼きそばを食べ終える。

「着替えてさ。次行こう!」

「え? てっきり一日中、海で遊ぶのかと思ってた。」

「それも思ったんだけどさ——」

朔は少し照れたように笑う。

「連れて行きたいところあって。すぐ近くにあるから、行かない?」

「いいよ。」

「よし、じゃあ行こう!」

そう言って、朔は私の手を軽く引いた。

更衣室で着替える。
濡れた髪をタオルで拭きながら、ふと胸が高鳴る。

——朔が連れて行きたい場所って、どこだろう。

海の余韻がまだ肌に残っているのに、次の予定を思うだけでまた心がそわそわしてくる。

外に出ると、朔が待っていた。
さっきより少し落ち着いた表情で、でもどこか嬉しそうに。

「じゃ、行こうか。」

夏の午後の光の中、二人で歩き出す。
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