(完結)家も仕事も失いましたが、一夜の恋で授かったお腹の子ごと若手社長に溺愛されています
 挨拶回りも済み、短時間の式はそろそろ終盤だ。

 ウエディングケーキの入刀のときは、大いに盛り上がった。

 白いクリームがたっぷり塗られて、大粒のいちごが乗ったケーキは、定番ながらもウエディングに相応しい色合いと豪華さだ。

 素敵なケーキの真ん中へ、二人で持ったナイフをそっと入れる。

 明莉と寄り添い、手を触れ合わせてナイフを持つのは、これも心震える瞬間だった。

 ケーキを切ったあとは、互いにケーキを食べさせ合う、ケーキバイトをする。

 巳影は明莉の美しいリップが落ちないよう、小さめになるように意識してケーキをすくったのだが、明莉は豪快にたっぷりすくってくれた。

 ケーキバイトは『結婚生活で、食べるのに困らないように』という願いも込められているので、明莉からの気持ちがそれほど大きいという意味だ。

 巳影はちょっと苦笑しつつも、大きく口を開けて、食べた。

 頬張ったケーキはほど良く甘く、クリームの滑らかな味が口の中いっぱいに広がった。

 大胆に食べた巳影に対して、来賓席から笑い声と、拍手が贈られる。

 気恥ずかしくて、明莉にも苦笑を向けてしまった巳影だったが、明莉はくすくすと小さく声まで零して、幸せそうに笑っていた。
< 218 / 242 >

この作品をシェア

pagetop