気がついたら天才心臓外科医と婚約していました

しばらくすると、波川先輩から我が家へ定期的に餅が送られてくるようになった。

どこかの高級和菓子ショップで購入したものかと思いきや、どこの店名も書かれていない。

一緒に送られてきた封書には「手作りだから早めに食べるように。」と書かれていた。

高いモチ米を使っているからか、はたまた心がこもっているからか、癖になるような美味しい餅だった。

その餅は不定期に送られてくる。

2年くらい間が空いたかと思うと、3日連続で送られてくることもある。

噂によると、波川先生は奥さんの機嫌が悪くなると餅をつき、仲直りしているらしい。

それは僕が結婚した後も続き、妻は「早く波川先生と奥さんが喧嘩しないかしら」などと不謹慎なことを言っている。

僕が65歳になった頃、餅ではなくどら焼きが送られてくるようになった。

多分、奥さんが餅を喉に詰まらせたに違いない。

そしていま現在も、忘れた頃にどら焼きが送られてくる。

それを見るたびに、波川先生と奥さんが仲直りしたんだな、と微笑ましく思う僕なのであった。
< 201 / 206 >

この作品をシェア

pagetop