社長、その溺愛は計算外です
「ええ」
「正直ですね」
「梓さんには、正直でいた方が楽なので」
その一言が、引っかかりを少しだけ和らげた。
この人が私に向けている言葉は、本物だ。
それだけは、分かった。
「圭佑さん」
しばらくして、私は口を開いた。
「はい」
「今日のパーティーで……圭佑さんのことを、初めてちゃんと見た気がします」
「どういう意味ですか?」
「仕事の場でも、こういう場でも、圭佑さんはどこにいても圭佑さんのままで」
私は言葉を選んだ。
「私は、さっきエレベーターを降りた瞬間に、一瞬だけ足が止まったんです。ここは、私が知らない世界だと思って」
「梓さん……」
「だけど圭佑さんは、私に『慣れなくていい』と言ってくれた。そのままでいいと」
「当然です」
「当然じゃないですよ」
私は、彼を見た。
「私をここに連れてきてくれたこと、嬉しかったです。それだけ、伝えたかった」
圭佑さんが、グラスをテーブルに置いてから口を開いた。
「梓さん」
「はい」
「この会場で、僕がずっと見ていたのは誰だと思いますか?」
「え……?」
「梓さんだけです。来た時から、ずっと」
周りの会話も、シャンデリアの光も、一瞬だけ遠くなった。
「場違いかどうかは、周りが決めることじゃない。僕が、梓さんに隣にいてほしいと思った。それだけです」
「圭佑さん……」
「それに」
彼が、ほんの少し口角を上げた。