愛を知らない私には

第6話 当たり前をぶち壊してきた奴

俺がつかんだことが怖かったにしては尋常じゃないほど震えている杏。

その行動がすべてを語っていた。

​

その後聞いたが杏は昔両親から虐待を受けていたらしい。

(なんだよそれ……なんで杏がそんな思いを……)

なぜか凄くムカついてしまう自分が怖くなり昨日はいつもより早く眠った。

​

今日も俺の当たり前をぶち壊してきた杏。

「寝る用と外出用の二着を一週間に一回洗濯すれば大丈夫ですよ。」

当たり前でしょ?という顔で言っている杏。

「そんな高価なものだめですよ……」

プチプラの服を見て本気な顔でそう言う杏。

「これはなんですか……」

スマホをみて目を輝かせて言う杏。

「ありがとうございます!」

とびきりの笑顔で心からそう言ってる杏。

(っ……!!!可愛すぎるんだよ……バカ……)

そのすべてを忘れられないと言う事実が答えを告げていた。

(ああ、俺、杏に惚れてるんだ……

こんなにムカつくのも顔が赤くなるのも全部、杏が好きだから……)

とうとう、自覚してしまった。

(クッソ……杏が可愛すぎるから。)

一旦気持ちをリフレッシュしようとスマホを手に取った瞬間、

プルルルル……プルルルル……

(え?杏からビデオ通話?!)

髪をさっと整えてすぐに応答ボタンを押す。

「「「っ……!!!」」」

そこには困ったような顔をして、

ーー今日買ったばかりのうさみみのついたもこもこパジャマがはだけている杏が写っていた。

「す、すみません……間違えてしまって……」

どうやら間違ってグループLINEのビデオ通話をかけてしまったらしい杏。

(お、お前……そんなことより……!!!)

俺がアワアワしている間に整理がついたらしい優斗兄が口を開く。

「杏ちゃん!パジャマ、はだけちゃってるよ……!!母さんに直してもらって!!

それと電話のマークわかる?そこを押して!切れるから!!!」

普段ならなんで?と聞く杏だが今は俺らの焦り具合が尋常じゃないと悟ったのか杏はすぐに電話を切る。

(っ……!!寝る前には刺激が強すぎる……!!)

はだけて見えた白いはだ、古い傷痕が頭に残る。

(ああっ、恋ってなんなんだよ……いままでしたことなんてねえからわかんねえけど……)

(杏だけは誰にも渡したくねえ……)

そう心に誓った俺はさっきの余韻でその後一睡もできなかったと言うことは言うまでもない。
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