総長は、私にだけ甘すぎる。
男たちが引いていく。

何もなかったみたいに。

でも、私は見てしまった。

彼が一瞬だけ私の方を見たこと。

ほんの一瞬。

それなのに。

胸の奥がざわつく。

「……なんで、助けるの」

そう聞こうとしたとき。

彼はもう歩き出していた。

「離れろ」

その一言だけ残して。

なのに――

離れられる気がしなかった。
< 22 / 118 >

この作品をシェア

pagetop