総長は、私にだけ甘すぎる。
黒崎蓮の目が、ほんの一瞬揺れる。

「……お前の名前は」

言いかけて、止まる。

喉の奥で何かを飲み込むように。

そして、絞り出すように言った。

「“桜庭咲良”じゃない」

その瞬間、世界が静かになる。

咲良の呼吸だけが、やけに大きく響いた。
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