推しの妻になりました〜アイドルと契約結婚〜

第17話 王子様



 しばらく走り続けた車は、都内屈指の高級住宅街にある、巨大な鉄門の前で停まった。
 ゆっくりと開く門を潜り抜け、また車が走り出す。
 ご対面の瞬間が近づくにつれ、苺依の緊張も高まっていく。

(やっぱりすごい家……どんな人なんだろう。大丈夫かな……)

 不安で心が押し潰されそう……。

――――ぎゅっ…

「……!?」

 繋いだままの手を彼が強く握り返した。
 まるで『大丈夫だ』と言わんばかりに。

(TOMAさん……)

 自分だって緊張しているだろうに。
 TOMAの目は苺依の不安を薙ぎ払うように強く輝いていた。

「……大丈夫だ……苺依」

 初めて名前を呼ばれて胸が鳴る。
 苺依は無言で頷き、TOMAの手を握り返した。
 
 ふっ、と。
 TOMAの唇に、今日初めての笑みが浮かんだ。

 やがて車が停車し、扉が開く。
 案内されるままに広い応接室へと導かれた。
 なんとも言えない重厚で荘厳な雰囲気が漂う。
 場違いな場所に迷い込んだ羊の気分。

(ダメだ、足がすくんで立てなくなりそう……。私なんかが、本当に務まるの?)

 空間に押しつぶされそうになる苺依。
 膝の上で握りしめた拳が、小刻みに震える。

 その時、隣に座っていたTOMAが、無造作に苺依の手を掴んだ。

「……冷てぇぞ。死人かよ」
「っ、あ……」
「……悪ぃな、こんなことに巻き込んじまって」

 TOMAは苺依の手を包みこみながら、らしくない言葉を放った。

「そんな……」
「……あんたをここに連れてきたのは俺だ。何があっても、俺が守ってやる。だから安心しろ」
「………」

 まるで王子様のような台詞。
 でも今の苺依にはこれ以上ない魔法の言葉。

「はい。ありがとうございます」
「頼んだぞ、いちご」

 にわかに見せた彼の微笑みに、苺依の震えは消えていた。
 そして、重たい扉が開いた……。

「待たせたな」

――To be continued
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