恋と結婚は別物です! 偽装結婚のはずなのに、強気なナースはフライトドクターの一途な愛に溶かされる
 それでも、なんだか棘のあるような言い方になってしまった。そのことに気づいて、すぐに続きを紡ぐ。

「それに、宇田川先生の言葉は嬉しかったです。『俺は俺と同じ信念を持っている彼女を信頼している』って。私もナースとして、できるだけ多くの命を救いたいです」

 言いながら今度は恥ずかしくなってしまい、膝に置いていた手元に視線を移す。
 だが脳裏には、先ほどお父さんと対峙した時の、彼の言葉が思い出されていた。

『くだらなくなんてない。そこに助けられる命があるなら、俺は助ける。それが医者の務めだ』

 彼のお父さんの言っていたことも、決して正しくないわけじゃない。だけど、私の思いは宇田川先生と同じ。
 だからこそ、私はフライトナースになったのだ。

「そうか」

 聞こえてきた彼の声色は、優しく私の耳に届く。

「ありがとうございます、宇田川先生」

 言いながら、彼のほうを向く。すると、彼は前を見据えたままそっと私に告げた。

「これからは、名前で呼んでくれないか? 龍臣、と」

「えっ!?」

 彼の突然の申し出に、素っ頓狂な大声を出してしまう。
 だが彼はそれを気にする様子もなく、淡々と続けた。

「いざという時のためだ。兄さんは、勘が鋭い。きっと、怪しまれていると思う」

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