恋と結婚は別物です! 偽装結婚のはずなのに、強気なナースはフライトドクターの一途な愛に溶かされる
 彼の口調は淡々としていたが、その内容からは彼の誠実さを感じた。
 だけどそれでは、龍臣さんの負担が多くなってしまうのではないか。そう思っていると、彼はさらに続ける。

「兄さんに怪しまれて偽装がバレたら、俺はベイショアERにいられなくなる。それだけは、どうしても避けたい。……だからどうか、俺の家での同居を承諾してくれないだろうか」

 彼の言葉からは、切実な思いを感じた。

 彼にベイショアERにいて欲しいと思うのは、私も同じ。それに、一度乗った船だ。ここまできたら、やり通すしかない!

 私はぐっとこぶしを握り、彼に応えた。

「わかりました」

 私たちは夫婦になるとはいえ〝偽装〟の関係だ。先ほどはついドキドキしてしまったけれど、私たちの間に愛はない。

 すべて演技だと割り切ってしまえば、恋が生まれることなどありえない。
 私たちは同じ目的を持った、ただの〝仲間〟なのだ。

「よかった。これからよろしく頼む、詩音」

 語尾に付け加えられた自分の名前に、ついどきりと胸が鳴ってしまった。なぜか、優しい響きを内包しているような気がしたのだ。

 いや、この胸の高鳴りは恋愛のそれとは違う。きっとこれから始まる彼との生活に対する、武者震いのようなものだ。

 運転席の向こうの窓には、いつの間にか東京湾が見えていた。
 夕日に照らされ赤く染まった海の輝きに、私はこの結婚を絶対にやり通すんだと決意した。

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