グルゥとリル、もりのはずれで

袋のそこのひかり

あさよりも、すこしあとの時間でした。

小屋のまえの石は、ひなたをうすくためていて、さわるとまだひんやりするところを少しだけのこしていました。
リルはその石のそばにしゃがんで、ひざのうえに小さな袋をのせていました。町へいくときにも使う、やわらかい布の袋です。きのうの帰りに入れたままだった丸い石を、ひとつずつ出して、ならべています。

石は三つありました。
どれも手のひらにおさまるくらいで、川べりの水に長くなでられたような、やさしいまるみをしていました。

ひとつ置いて、またひとつ置いて、
さいごのひとつをつまんだとき、リルの手がとまりました。

袋のそこに、光がありました。

布の重なりのあいだからではなく、ちゃんと、まるく小さくあいたところから、外のひかりがのぞいていたのです。
リルは袋を持ちあげて、空のほうへすこしだけ向けました。すると、その穴は、朝ののこりの明るさをひとつぶだけ通して、足もとに落としてきます。

「……あな」

ちいさな声は、風にさわられて、すぐやわらかくほどけました。

戸口のそばでは、グルゥが長い布をたたんでいました。
その声をきいて顔をあげ、リルの手もとを見ると、何も言わずにこちらへ来ます。足音はいつもどおり、木の影がうつるみたいに静かでした。

リルは袋をさしだしました。
グルゥは受け取って、親指の先で穴のまわりをそっとひろげます。糸がすこしだけゆるんで、そこだけ古い実の皮みたいに薄くなっていました。

小さな穴でした。
石ひとつなら、ころんと落ちてしまいそうなくらいの、大きさです。

グルゥは袋を日に透かして見て、それから小屋へもどりました。
リルは石をならべたまま、その背中を見ていました。
石のとなりには、穴を通ってきた光が、まだまるくのこっていました。

しばらくすると、グルゥは布きれを一枚持って出てきました。
やわらかな、くすんだ色の布でした。前に小さく切って残してあったものらしく、角がまるくなっています。
グルゥは袋をひざにのせ、穴のうらへその布をあてました。道具らしいものは使わず、袋の口を結んでいたひもをいったんほどき、細くして、布ごときゅっと留めていきます。

少しふくらんだ丸いあとが、袋のそこにできました。
つるりと平らではないけれど、指で押すとやわらかくて、そこだけ別のぬくもりがあるみたいでした。

リルは指先でそのふくらみをさわりました。
布の下に、ちゃんと穴がかくれているのがわかります。

「ここ、やわらかいね」

グルゥは、うなずきました。

それから袋をさかさにして、さっきの石をひとつ入れ、軽くゆすってみせます。
石は落ちませんでした。
もうひとつ入れても、だいじょうぶでした。
さいごのひとつも入ると、袋はすこしだけ形をふくらませ、さっきよりも落ち着いた顔になったようでした。

リルはそれを受け取って、両手で持ちました。
なおしたところは、外から見るとほんの少しだけふくらんでいて、よく知らない人なら、はじめからそういう袋だったと思うかもしれません。

風が通ると、戸口にかけた布が、ちいさくゆれました。
石の上の光も、もう形をかえていました。穴を見つけたときのまるいひとつぶはなくなって、かわりに、袋のふくらみのうえへ白くやさしい明るさがのっています。

リルはそのあたりを、しばらく見ていました。
やぶれたところがなくなると、さっきまでの小さな穴まで、なんだか袋のなかへしまわれたようでした。

グルゥは石をひとつ拾って、袋の口をととのえ、リルのそばへ戻します。
それだけして、また布のつづきをたたみにいきました。

リルは袋をひざにのせたまま、なおしたところを親指でなぞります。
指の下にある丸みは、つぎはぎというより、そこだけ雲がひときれ休んでいるみたいでした。

そのまま石にもたれて座っていると、袋のなかで石がこつりと触れあいました。
小さな音でした。
けれど、どこにも落ちていかない音で、リルはそれをもういちど聞くように、袋を胸のほうへ寄せました。
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