ぼくと世界とキミ

     *

「……ロイ様!!」

急にカインが声を上げ、歩いて行くロイを呼び止めた。

「……何だ?」

そう言ってロイが不思議そうに振り向くと、カインは何か言いたげに小さく口を開く。

するとその瞬間、ロイの後ろに立っているジルとセリアが、静かに首を横に振った。

それはまるで《彼》に《教えてはならない》と言っている様に見え、カインは飛び出し掛けた言葉を飲み込んだ。

「……いえ、どうか……ご武運を」

カインのその言葉にロイがニッコリと眩しい笑みを浮かべ大きく手を振って答えると、四人はまた駅に向かって歩き出した。

カインは見えなくなっていく四人の後ろ姿を見つめたまま、その場に立ち尽くす。

「世界の終わる時、王家に翡翠の瞳の子が生まれる。それは女神に祝福された神の子。他王家の証を持ちし者を集め、神の力を解放し、世界を救う勇者となる」

カインの唇が小さく震え、それはこの世界の《伝説》を呟く。

「その勇者……《神の力》をもって世界を滅ぼさんとする《女神》を殺し……世界を救う」

それが……王家に伝わる《伝説》

「勇者は……何も知らない」

カインのその小さな呟きと共に急に強い風が吹き、それはまるでカインを責め立てる様に吹き付ける。

「どうかロイ様の未来が……安らかでありますように」

冷たい風の吹き付ける中、カインはそっと……叶わない祈りを捧げた。
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