ぼくと世界とキミ

「だから……泣きそうな顔をしないで下さい」

そのアシュリーの言葉に、思わず彼女を振り向きゴクリと息を呑んだ。

「誰だって戦うのは怖い。命を奪う事はもっと怖い。でも貴方はフリーディアを守るために……逃げる事は許されない」

アシュリーの澄んだ強い瞳は、真っ直ぐに俺を見つめている。

「でも……迷わないで下さい。貴方が迷えばここに居る全ての者が迷う。だからどうか……心を強く持って」

そのアシュリーの言葉が……胸に刺さった。

……怖い。

……人を殺す事が怖い。

……失う事が怖い。

……逃げ出してしまいたい。

本当は心の中で、ずっと叫び続けていた言葉。

彼女には……見透かされていた。

「お前は……強いな」

そう小さく呟き困った様に笑うと、アシュリーは静かに頷いた。

「共に罪を背負いましょう。大切なモノを……守るために」

その彼女の言葉に……不思議と心が軽くなった気がした。

奪い奪われる愚かな争いを、俺は今始めようとしている。

不毛で救いの無い……決して終わる事の無い争い。

そう……その罪を背負って戦おう。

今度こそ……大切なモノを守れる様に。

グッと手綱を握り締め決意を固めると、真っ直ぐにアシュリーを見つめた。

「……すまない」

そう小さく呟くと、アシュリーは静かに首を横に振った。

それを見て少し目を丸くすると、アシュリーは首を傾げて俺の答えを待っている。

「……ありがとう」

そう言い直し微笑んで見せると……アシュリーは満足そうに穏やかな笑みを浮かべて頷いて返した。
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