ぼくと世界とキミ
第三十一話 セレリア

あれから俺達は、元グレノア軍を連れて、真っ直ぐにセレリアへと向かった。

グレノア兵士達の中には、やはり家族や国を裏切れない者も多く、約三分の一程の兵士はグレノアへと戻って行った。

それは当り前の事だし、責める奴等は誰もいない。

グレノアへと戻った兵士たちもルークのやり方には賛同出来ない者が大半らしく、出来れば俺たちとも争いたくはないらしい。

もちろん俺だって全面戦争は絶対にごめんだ。

そんな事を考えながらセレリアへ到着すると、城下町の中へと足を踏み入れた。

よく知っているはずのその町には、何の気配も感じない。

魔物も……人の気配も。

ルークはセレリアの国民達に絶対的な服従を誓わせる為、見せしめの様にこの町の人間を殺し尽した。

この町で暮らしていた者達で生きているのは、多分ごく少数だと思う。

圧倒的な力で城を制圧し、王族を殺したグレノアの力を前に……セレリアの国民達はただ従順に生きる事しかできなかったらしい。

見慣れた筈の町にはかつての面影は無く、どこか知らない場所の様に感じた。

連れて来た兵士達の半分に町の様子を見る様に頼むと、そのまま誰もいない廃墟の町を兵士を引き連れ進んで行く。

元々セレリアの兵士だった奴等は変わってしまった町の様子を切なそうに見つめ、中には悔しそうに唇を噛み締め、涙を流している者もいる。

そんな重い空気の中真っ直ぐにかつての人の賑わっていた大通りを進んで行くと、真っ赤な大きな扉が姿を現した。

ボロボロの赤い扉をそっと見上げると、皆は少し心配そうに俺の様子を窺っていた。

「……ロイ」

ジルに名前を呼ばれそれに小さく頷いて答えると、そのまま城門をくぐり、その奥へと進んで行った。
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