ぼくと世界とキミ
第三十四話 涙

黙々と薄暗い森を歩き続ける。

話し出す者は誰も居ない。

俯いたまま歩き続ける俺の後ろを、ジルとアシュリーが俺の様子を伺う様に付いて来る。

それを無視して、無言のまま真っ直ぐにグレノア城を目指す。

……何も考えていなかった。

……いや、何も考えたくなかった。

何が正しくて何が間違っているなどと、考える余裕は少しも無い。

ただ流される様に、セレスの言った通りにグレノアを目指していた。

無言のまま休む事もせずに歩き続ける俺の姿に……二人が時折悲しそうな顔をする。

その二人の姿に、訳も分からずイライラした。

まるで腫れ物でも扱う様な二人の態度が、余計に俺を虚しくさせる。

……どうして俺なんだ。

……どうしてこんな事になったんだ。

……どうして。

いつの間にかその言葉だけが頭の中を廻っていた。

(……ロイ……待ってる)

セリアの最後の呟き。

……セリア。

世界創世の女神。

世界を滅ぼす存在。

愛しいモノ。

眩しい天使の様な笑顔。

繋いだ手。

抱き締めた温もり。

流れた涙。

いつの間にか足が止まっていた。

木々の囁きだけが、静かな森に響いている。
< 305 / 347 >

この作品をシェア

pagetop