ぼくと世界とキミ

「……勇者は……」

そう言いかけて、途中で止めた。

少女の顔が今にも泣き出しそうに歪んでいる。

……そう、全てはもう決まっている事。

この《女神》が世界を創り出した《始まり》と共に、逃れようのない《終わり》が定められている。

それから暫く沈黙が続いた。

風だけが優しく吹き、さわさわと世界樹を揺らしている。

「俺は……お前を恨んでなどいない」

そう小さく呟くと女に背を向け、その場から離れる様に歩き出した。

「……ありがとう」

後ろから声が聞こえそっと後ろを振り向くと、そこにはもう……女の姿は無かった。
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