第一印象最悪の彼が、最愛の旦那さまになりました
 日によっては朝から晩まで分刻みのスケジュールが入ってる。空白の時間だって事務処理などがあるのだろう。

 いつも涼しい顔をしているから、これほどのハードワークを熟しているとは思わなかった。

「当分、ゴルフ休暇は無理だね」
「大丈夫。なんとかする。千咲のスケジュールを見せて」
「私はたいした予定はないんだけど」

 六割程度しか埋まっていないスケジュールリストを表示する。澄春に比べると見どころがないのに、彼は熱心に眺めていた。最終的には向こう一カ月の予定をすべて保存していた。

 彼は何ごとにも関心がないと思っていた過去が嘘のようだ。


 週明け。澄春がAIシンポジウムに出席するため、早朝に家を出た。

 千咲は久しぶりに電車で通勤し、一階のエントランスから会社に入った。

 しかし、しばらくすると様子がおかしいことに気が付いた。

(なんだか……じろじろ見られてる?)

 やけに視線が集中している気がする。

 なにかの間違いかもしれないと様子を窺っていたが、間違いないと確信した。

(やっぱり私が見られてる)

 澄春との結婚を発表したときと同じかそれ以上の注目度だ。

 ただ違っているのは、以前は祝福ムードが漂っていたのに、今は批難するような冷たい視線が突き刺さっている。

 嫌な予感がこみ上げて、千咲はコーヒーショップを素通りし、オフィスに直行した。

 席に着いて、どうなっているのか調べるつもりだった。

 総務部のフロアに着いても状況は変わらなかった。むしろ悪化したかもしれない。

 ひそひそと何かを囁く声がする。

 陰口を叩かれているような、不安を感じたまま千咲は自席についた。すると隣の席の後輩がひそひそと声をかけてきた。

「おはようございます」
「おはよう」
「千咲さん、あのトレンドは本当なんですか?」
「トレンド?」

 なんのことか分からず、千咲は首を傾げる。

「見てないんですか? 早くチェックした方がいいですよ」

 千咲は後輩に急かされて、訳が分からないまま、SNSをチェックした。

 アプリを開くと通知が山のように溜まっていて驚愕する。

 千咲の個人アカウントは低浮上で、やり取りも殆どないのに。

「な、なにこれ……」

 とりあえずトレンドを確認してみる。

 その瞬間、千咲は声を上げそうになった。

【アローフォワードの水無瀬社長の新妻に不倫疑惑】
【鳴り物入りのマッチングサービスでゴールインした水無瀬澄春氏の離婚危機】
【話題のベストマリアージュ、とんだ失敗作だった!】

 千咲の知らないところで、予想もしていなかった事態が起こっていた。
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