第一印象最悪の彼が、最愛の旦那さまになりました
《そんなすぐに結論を出さなくなっていいじゃない。この機会を逃したら水無瀬社長レベルの人と結婚するチャンスなんて二度とないよ》

 彩香は考え直せと連呼する。

 彼女が言うように、澄春が稀有な人だということは分かっている。彼がどれほどハイスペックなのかも。

 でも千咲が求めるのは、思いやりがある温かな家庭なのだ。

 幸せを共有し、悪いときは支え合えるような。

「私の気持ちの問題だけじゃないよ。無瀬社長がおばあちゃんを安心させられると思えない」

 むしろ祖母の心労が増す可能性がある。

 彩香が一瞬無言になった。きっと彼女も同意見なのだろう。

《……最初に事情を説明しておけばいいんだよ。病気のおばあちゃんを安心させたいって話し合っておけばいいんじゃない?》

「話し合い?」

 千咲は思わず遠い目をした。あの人と交渉なんて可能だろうか。今日だって完全にイニチアチブを握られていた。

 社長と社員という立場である以上、対等な交渉など不可能だ。

《ねえ、冷静に思い出して? 今まで千咲が気が合うとと思って、優しいと信じて付き合った相手に、傷つけられたじゃない》

 これまでの婚活相手の顔が思い浮かび、憂鬱になった。確かに自分は相手の気持ちを見抜くことができなかった。
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