第一印象最悪の彼が、最愛の旦那さまになりました
「結婚を決めたときに何も考えずに選んでわけじゃないってことは、私に嫌悪感がなかったってことですよね?」

 機械的に選ばれたと思っていたけれど、少しは彼の感情が入っていたということだ。嫌われてもいなかった。

「そんなことで喜ぶのか?」
「はい、うれしいですよ」

 千咲が笑顔で応えると、澄春は眉を上げた。

(おおげさって思われてるのかな?)

 祖母の件で気持ちが舞い上がっているからか、それともワインの影響か、今日は澄春に対する壁を感じない。

 つい口数が多くなる。澄春が意外にも嫌そうな顔をせずに相手をしてくれるせいで、ますます会話が楽しくなる。

「あれ? コースもあるんですね」
「基本的にはコースでの注文をお願いしているんですよ」

 何気なくメニューを見ていた千咲の呟きをシェフが拾った。

「そうなんですか? じゃあ、これは特別メニュー?」
「はい。水無瀬さんは当店のVIPなので」

 千咲は目を丸くして澄春を見つめた。

(こんなラグジュアリ―な店のVIPになるなんて!)

 いったい何をしたら、そんな特別扱いを受けることができるのだろう。

 でも納得がいった。シェフが専属で付いてくれるのも、同じカウンターに他の客がいないのも、VIP待遇だったのだ。
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