恋煩いの処方箋
プロローグ
プロローグ

 彼と最初で最後のキスを交わしたのは降り積もる雪の音が耳に届くほど静かな夜だった。

「はじめてなの」

 震える私の言葉に彼は無言で頷いて、シングルベッドの上に隣り合って座る。ぎこちなく唇を合わせる。照れくささを誤魔化すように意味もなく笑い合ったりしながら、でも止めることはしない。

慣れない手つきで、まるで壊れ物を扱うように丁寧に私の肌に触れる。

それだけでもう、愛おしさがこみ上げてくる。

ずっと好きだった。彼だけを好きでいた。

報われることのない恋だとしても、この宝物のような思い出があれば生きていける気がした。
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