恋煩いの処方箋
6.娘さんを僕にください
6.娘さんを僕にください

 最近娘の機嫌がいい。まるで推しのコンサートの前日みたいに毎日ウキウキしている様子が窺えて、わが子ながら分かりやす過ぎるなぁと微笑ましく思って見ている。
「ママ、今日はせん、じゃなくって大和くん来るんだよね?」
 なぜか少し照れながら和花は言う。
まだパパとは呼べずにいるが、彼が時間を作ってこまめに会いにきてくれているおかげで以前よりも確実に父親としての存在感は増していると思う。
「仕事が早く終わったらって言ってたから、来れないかもしれないよ」
 期待し過ぎると来られなかった時のガッカリ度がますので、私はいつも曖昧に答えることにしている。すると、
「もーママのイジワル。そういうこと言わないで!」
 と、和花はわかり易くむくれる。私だって週末の夜くらいゆっくり家族で過ごしたいと思っている。けれど、大和の仕事を考えるとあまり私たちに時間を割いてもらうのも申し訳ない気持ちになってしまう。
彼は救急医になるために経験を積んでいる最中で、本来なら休日は勉強のために使いたいだろう。職場の同僚との繋がりや、もちろんひとりの時間だって必要だ。そういったものを全て投げ打ってまで私と和花と一緒に過ごすことが最善とは思えないのだ。
せめてこの二重生活をやめられたら、私がサポートできる事も増えるのではないかと思っている。
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