本日より、弊社社長と疑似子育て始めます
2.突然の同居スタート
一哉に促されて乗った彼の車が到着したのは、会社近くの百貨店だった。
「ここは……?」
「まさかとは思ったが、今の君の荷物はそのキャリーケースひとつってことなんだろう?」
その通りなので、野々花はおずおずと頷いた。
自宅マンションには食器類などが残っているけれど、そういった物を除けば、このキャリーケースが今の自分の全てだ。大きすぎて最寄り駅のロッカーに入らなかったため、仕方なく職場まで持ってきている。
すると、一哉は大きなため息をついた。
「双子の迎えの前に、当面必要なものを買わないと。あまり時間がない、行こう」
理解が追いつかないまま促がされて足を踏み入れた百貨店で、仕事用の服や靴、バッグ、コスメやスキンケア用品など、これまで野々花が持っていた物以上の質と量を買い与えられた。
「とりあえずはこんなものか」
「あの、いただけません! こんなことしていただく理由が――」
必死に首を横に振って辞退するものの、一哉が頑として聞き入れてくれない。仕事中は部下の意見にも耳を傾けてくれる理想的な上司だが、どうやらプライベートは頑固なところがあるらしい。