響け!沈黙のレクイエム
僕なしで上手く幸せになってね
午前零時。日付けが変わった。

リズ・ポッターはパジャマではなく、いつものエプロンドレスを着たままだった。その顔に表情はない。

リズは窓の外を見た。夜空には大きな月が輝き、室内をぼんやりと照らしている。リズは息を吐いた。

(月とは、こんなにも綺麗なのね……)

リズは部屋を見回す。探偵事務所で働くようになってから、少しずつ荷物が増えていった。これから自分は消えるというのに、何一つ捨てられていない。否、捨てられなかった。

(レオンハルトさん……。あなたに出会えてよかった)

リズの頭にレオンハルト・ジッキンゲンが浮かぶ。世界でも名の知れた名探偵。洞察力と確かな推理力を持ち、多くの人を救ってきた。リズもその一人だ。

(アントーニョさん……。不器用ながらに、私のことを気にかけてくれた)

次にアントーニョ・セルバンテスの顔が浮かぶ。洞察力や推理力はレオンハルトに劣るものの、アントーニョはとても強い。その強さにいつもリズたちは守られてきた。
< 1 / 4 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop