黒魔術の使い手ですが何か?! 死に戻り王太子妃は今世ではもふもふ精霊と一緒に楽しく暮らしたい
え?

「どう?おいしい」

え?
え?
何が起きたの?

口に入って来たチーズケーキをもぐもぐと咀嚼しながらもしかしたらこれは間接キスなのではないかと考えた。
思わず周りを見ると周りにいる護衛騎士や侍女たちが少し目を見開いたのがわかる。

は、はずかしい。

こんなことをするなんて貴族令嬢としてどうなんだとまた明日噂にされてしまう。

「申し訳ありません。はしたないことを……」

「そうか?わたしはそうは思わないよ。オーロラ嬢のそういう表情がかわいいと思うな」

か、かわいい?

「わたしは無表情な令嬢よりきちんと自分の感情を表してくれる人の方が好きだ」

自分の感情を……。
そこで思い当たったのはノエルだ。
ノエルはとても表情豊かな感情表現が多彩な女性だった。
貴族令嬢は感情を顔に出さない能面のような女性が一番教養があるとされる。だが、そうか。昔からウォルターは感情豊かな女性が好きだったのね。
やはりノエルは出会うべくして出会った女性だったのだわ。

「ですが、初めての席ではしたないことをいたしました。お詫びいたします」

オーロラはすまして答えた。

これからは注意しなければ。
今日はあまりの驚きに我を忘れてしまったけれど、こんなことではお父様にも怒られてしまう。

「ふーん」

ウォルターは少し寂しそうな表情をしているように見えた。

「今はまだいいか。ところでオーロラ嬢。これからは週に一度、水曜日は王宮で王太子妃の教育を受けるのだったね」

「はい。一年後の入宮に向けて来週より教師をつけていただくことになりました」

教育といってもオーロラには前世の記憶があるため、ほとんど覚えているとは思うが……。

「ならば、その日は必ずここで夕食をとること」

チーズケーキを食べ終わったウォルターは紅茶を口に運びながら意味の分からないことを言う。

「え?」

「一年後に夫婦になるんだ。少しずつお互いを知らなければならないだろう?」

言っていることは理にかなっている。
だがお互いを知るも何も小さい頃は知っているわけだし、それにウォルターは結局はノエルを愛するのだから……。

「そ、そうですが……」

「なら、決まりだね。授業が終わったらここで待つように。王宮での君には侍女をつけるようにするから」

「侍女をですか?」

「ああ。ケイト。こちらへ」

「はい」

ウォルターに呼ばれてやってきたのは前世でも自分に仕えてくれていたケイトという侍女だ。オーロラと同じくらいの歳ごろで真摯に使えてくれていた。懐かしい。
この侍女だけは最後までオーロラへの誹謗中傷を言わなかったと記憶している。

「ケイトと申します。王宮でのオーロラ様のお世話を担当させていただきます。よろしくお願いいたします」

「ケイト。よろしくね」

「よし。じゃぁ。少し歩こうか。君に見せたいものがあるんだ」

「見せたいものですか?」

「ああ。行こう」
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