黒魔術の使い手ですが何か?! 死に戻り王太子妃は今世ではもふもふ精霊と一緒に楽しく暮らしたい
「お義母様。これシフォンケーキというのですって。パルリム王国から入って来たものでとてもふわふわらしいですわ」
何十種類ものケーキを用意してくれていたが、ソードノーズには今までなかったケーキを紹介してみた。
「シフォン?だと?」
父が反応した。
父はおそらく戦争でいろんな土地へ出向いたことがあるからこのケーキも知っているのだろう。
「わたしはそれをもらおう」
「あら、わたしがもらいますわ」
「何?」
母がかぶせるように言うと、父はびくっとして母を見た。
「あなたはパルリムで食べたことがおありなのでしょう?さぞかしお茶を入れるのが上手な方とお食べになったのね。わたしは食べたことがないもの」
「そ、そうだな」
父は戦地でいろんな愛人を作っていた。そのことを揶揄しているのだろう。母のベラも戦地での愛人のひとりだったのだから。
「ま、まぁ今はもう食べることはない」
「どうかしら?」
「わたしの知っているケーキまで食べていたくらいだものね」
「そ、それは……」
エンジェルの母のことだ。
シーヴァを見ると、はらはらした面持ちでふたりを見ている。本当にこんな一面があったとは……。
父も驚くことに義母にたじたじだ。
こんな父を前世では見たことがない。
義母はこのころ車いすだったし野犬にかまれてから身体も弱くなり執務もしていなかった。
そもそも食卓を囲むことすらなかったのだ。
それを思えば今は皆それなりに幸せに過ごしているし、父と義母は愛し合っているわけではないだろうが、対等な関係を築いているのではないか?
返す返すも義母を助けておいてよかったと思う。
「まぁ、よろしいですわ。シフォンケーキとやらをわたしのお皿にのせなさい」
「は、はい」
しどろもどろのシェフは父に確認するように見てから、父の首が縦に振られるのを見て義母の皿に丁寧に盛り付けた。
母はすいすいと綺麗に音を立てずにシフォンケーキを口に運んでいく。
育ちは公女様だ。所作はとても美しい。
「悪くないわね。あなたもいただかれては?」
「よいのか?」
「シーヴァがせっかく呼んでくれましたのよ」
「そうだな」
最後はふたりとも笑顔になっていた。
シーヴァがふたりを仲直りさせたのだ。
ちらとテーブルの端に座るエンジェルを見る。
静かにうつむいたまま出されたケーキを食べていた。
ここに来て二カ月。
ろくに話したことはない。
前世だと、義母とシーヴァとの関係が悪かったから、エンジェルとだけ話をしていた。
氷みたいなこの家でエンジェルだけが温かい灯みたいに思っていたのだ。
だが、死ぬ間際のあのエンジェルの顔。
忘れられない仕打ち。
もう彼女と心を通わせることはないだろう。
この暖かい食卓でひとりだけ冷たい氷のようにその場所だけ凍り付いていた。
何十種類ものケーキを用意してくれていたが、ソードノーズには今までなかったケーキを紹介してみた。
「シフォン?だと?」
父が反応した。
父はおそらく戦争でいろんな土地へ出向いたことがあるからこのケーキも知っているのだろう。
「わたしはそれをもらおう」
「あら、わたしがもらいますわ」
「何?」
母がかぶせるように言うと、父はびくっとして母を見た。
「あなたはパルリムで食べたことがおありなのでしょう?さぞかしお茶を入れるのが上手な方とお食べになったのね。わたしは食べたことがないもの」
「そ、そうだな」
父は戦地でいろんな愛人を作っていた。そのことを揶揄しているのだろう。母のベラも戦地での愛人のひとりだったのだから。
「ま、まぁ今はもう食べることはない」
「どうかしら?」
「わたしの知っているケーキまで食べていたくらいだものね」
「そ、それは……」
エンジェルの母のことだ。
シーヴァを見ると、はらはらした面持ちでふたりを見ている。本当にこんな一面があったとは……。
父も驚くことに義母にたじたじだ。
こんな父を前世では見たことがない。
義母はこのころ車いすだったし野犬にかまれてから身体も弱くなり執務もしていなかった。
そもそも食卓を囲むことすらなかったのだ。
それを思えば今は皆それなりに幸せに過ごしているし、父と義母は愛し合っているわけではないだろうが、対等な関係を築いているのではないか?
返す返すも義母を助けておいてよかったと思う。
「まぁ、よろしいですわ。シフォンケーキとやらをわたしのお皿にのせなさい」
「は、はい」
しどろもどろのシェフは父に確認するように見てから、父の首が縦に振られるのを見て義母の皿に丁寧に盛り付けた。
母はすいすいと綺麗に音を立てずにシフォンケーキを口に運んでいく。
育ちは公女様だ。所作はとても美しい。
「悪くないわね。あなたもいただかれては?」
「よいのか?」
「シーヴァがせっかく呼んでくれましたのよ」
「そうだな」
最後はふたりとも笑顔になっていた。
シーヴァがふたりを仲直りさせたのだ。
ちらとテーブルの端に座るエンジェルを見る。
静かにうつむいたまま出されたケーキを食べていた。
ここに来て二カ月。
ろくに話したことはない。
前世だと、義母とシーヴァとの関係が悪かったから、エンジェルとだけ話をしていた。
氷みたいなこの家でエンジェルだけが温かい灯みたいに思っていたのだ。
だが、死ぬ間際のあのエンジェルの顔。
忘れられない仕打ち。
もう彼女と心を通わせることはないだろう。
この暖かい食卓でひとりだけ冷たい氷のようにその場所だけ凍り付いていた。