黒魔術の使い手ですが何か?! 〜死に戻り王太子妃は今世ではもふもふ精霊と一緒に楽しく暮らしたい
◇

「オーロラ様。ここです」

馬車を降りると血水症が怖いのか馬丁は一目散に帰って行った。
命を落とすかもしれないのにスコットはきちんと残ってくれている。

「スコット。ありがとう。あなたには感謝してもしきれない。もどったら褒章を出すわね」

「有難いお話ですが、そんなものいりません。僕はオーロラ様を守るためにおります」

現場はひどい有様だった。
血水症が治ったらしき元気な者が患者の世話をしている。
患者の中にはもう虫の息の者もいる。

ああひどい。
とにかくウォルターを探さなければ。

「スコット。ウォルター殿下を探しましょう」

現場をひとつずつ回るといた。
指揮官として一番真ん中のテントの中にだ。

顔を見るとかなり疲労は溜まっていそうだが、元気そうだ。

「オーロラ。どうして」

「血水症が流行していると聞き参りました」

「だが、君にも」

「わたしにはうつりません。わたしは菌を殺せます」

「あ、そうか。治療にわざわざ来てくれたのか?」

「はい。治癒師がいると聞きましたが、その方は……」

「ここにいるわ」

奥から出てきたのはノエルだった。

え?

ウォルターと一緒のテントにいたことに衝撃が胸を貫く。
出て来たところはおそらく寝床として使っているところに違いない。
もうふたりはそういう仲になっていると?

「ああ。君。休めたかい?」

ウォルターが気さくに話しかけている。
やっぱりもう……。

「ええ。休めましたわ。殿下」

ノエルはにっこり笑いながら答えた。

「うん。わかった。では治療をお願いする」

「でもわたしはもうかなり疲れていて」

「だから休んでもらったじゃないか?まだ休息が必要かい?」

何かおかしい。

「わかりました。兵士たちを見てきますわ」

ノエルが護衛騎士を引き連れて出ていく。

「ふう。腕のい治癒師だと聞いて呼んだのだが、誰も治らない。どうなっているんだ」

ウォルターが独り言をつぶやいている。

治らない?
前世で大聖女と呼ばれた彼女の治療が効かない?

「そうだわ。殿下わたしも治療をします。患者のところに案内してください」

「オーロラ。だが……」

「いいんです。人の命には代えられません。ここでわたしが黒魔術師だとばれて後ろ指をさされるのなら、わたしは王宮を去るまで。それより人の命の方が大事ですから」

「オーロラ……では案内しよう」

ウォルターは大きなマスクを装着するとオーロラを伴い、患者のもとへ案内した。
患者たちは大きなテントに転がるように寝転んでいる。
ひどい環境だが、戦地ではこれが精一杯だろう。

「痛い。助けてくれ~」

「ああ。水。水をくれ」

様々な叫び声を出せている患者はまだいい。だが、もう声を出すことすらできない患者は死が近い。
そういう患者は菌を殺してももう……。

だがあきらめない。

「殿下。水はあるのでしょうか?」

「ああ。毎日ハートリー男爵領から大量の水を仕入れている。だが一向によくならないんだ。むしろ患者が増えているように思える」

増えている?
殿下。水を見せてもらっても?

大きなタンクに入った水を兵士がもってきた。

中をあけてオーロラが一口飲んでみた。

これは……。
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