闇深兄の溺愛 〜甘いデザートには、一滴の毒を〜
——ピコン。
通知音が、今この瞬間、
私たちを繋いだことを知らせるように鳴る。
「これで友達」
碧くんが笑顔を向けた瞬間、
私たちの間を通り抜けるように春風が吹き、
桜の花びらが淡い空へと溶けていく。
「うん……!」
胸がじわっと温かくなるのを感じながら、
笑い返したその時。
「——もう終わったのか?」
背後からの声に心臓がドキッと跳ねる。
振り返ると、颯が立っていた。
「あ、お兄ちゃ……じゃなくて、颯!ゼミはもう終わったの?」
「ああ、少し早く終わった。……こちらは?」
颯が「王子様」の笑みを
浮かべながら、碧くんを値踏みするように見る。
「碧くんだよ!さっき私のレポート手伝ってくれたの」
「学科の子ともう仲良くなったのか。それはよかったな」
颯はそう言って私の隣に立つと、
私の腰を”ぐいっ”と勢いよく引き寄せた。
「うちの美桜を助けてくれたみたいで。ありがとう。……”碧くん”だったかな?」
「あ、はい。佐伯先輩……ですよね。噂は聞いてます」
会話は穏やかなのに、
静かに二人の視線がぶつかる。
颯が向ける笑顔の中に、
碧くんを牽制するような冷ややかな瞳があった。
「美桜ちゃん……知り合い?」
私が答えるよりも先に颯の笑い声が響く。
「知り合いなんて他人行儀な。こいつは俺の……まあ、妹みたいなもんだよ。俺がついてないと何もできない子だからさ、君が心配しなくても大丈夫だよ」
「あ、え……」
「な? 美桜。……さ、帰るぞ」
颯は碧くんに挨拶する隙も与えず、
私の背中に手を添えるようにして歩き出した。