Marry Me?

Vol.23.モノクローム【大樹SIDE】

 自分の見てきた世界はモノクロームだった。

 床は、足の踏み場がなく。布や服やタオルまみれで。シンクは常に汚れていた。――離乳食を卒業してからは、冷凍食品に随分お世話になった。

 母が――笑うことは滅多になく。疲れた顔をしていた。

 だから――笑わせようと努力した。けれど――無駄だった。

 無駄、の一言で、誰かの努力を片付けたくはない。コードレス掃除機のように。手軽に簡単に。ぼくの、本能が――拒む。全力で拒否する。

 が。

 悲しみの向こう側に一体なにがあるのだろう。母は……なにかを、諦めたような顔をしていた。疲れていた。父と、喧嘩する労力すらなく、自室でひとり、横になっていることが多かった。

 この環境を、父も、グランマも、まずいと思ったらしく。グランマが、トロントから二時間かけて車を飛ばしてやってきた。……グランマの前でだけマムは笑顔を見せる。そのことが、嬉しくもあり、悔しくもあった。
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