Marry Me?

Vol.32.和泉高春の自覚

 そつなく、何事も、そこそこ器用にこなせるタイプだと思っていた。

 恋愛も、趣味も、……生活も。

 就活以降を除いては。

『シンシアリー』は大手企業で、おれは、専門職での採用を狙っていたのだが……会社から逆に、販売職はどうかとオファーがあった。仕事はそんなに簡単に選べる状態ではなく、他に内定企業がなかったので、おれはOKした。

 しかも、『Sweet Lip』と来た。メジャーなブランドではあるが、結構安めの価格帯で。タンクトップ系であれば千円台、コートが12000円で買える、だいたい五千円出せばなにかを一着買えるくらいのお手頃感だ。『シンシアリー』はハイブランドの取り扱いもあるというのに。……服飾の専門学校を出た自分にその仕打ちかと。おれは内心会社を憎んだものだ。

 ともあれ、仕事がないことには生活出来ない。販売職に不満があれば、異動願いを出す。転職する。……などと、割と考えていたのだが……。

 社会は、おれが考えていたよりも、ずっとずっと、厳しかった。

 * * *
< 218 / 267 >

この作品をシェア

pagetop