Marry Me?

Vol.15.初めてのシャンプー

 異性を前に、お風呂場で。――しかし、そういう展開にならなかったのは、彼が、初めてかもしれない。

 お風呂でするの、男の子ってやたらと、喜ぶんだよね。何故だろう。やっけに裸も見たがるし――

 てっきり、『そういう展開』を予想していたのに。領域、展開……ッ!

 大樹が選んだのは、こちらが肩透かしを食らうくらいの、紳士的な行動、だった。

「あーこのブラシいいよね。おれ、これの黒、持ってる」

「……ほんとっ?」湯船に浸かるあたしは、背を大樹のほうに向ける格好だ。後ろから頭をわしわしと洗ってくれている。パンツを膝までまくり、例のごとくTシャツを肘までまくりあげて、熱心に、あたしの髪を泡立ててくれる彼が――愛おしい。バスタブに背を預け、……うん。極上の気分。

「あー気持ちいい……。極楽極楽」

 はは、と乾いた木を思わせる、からりとした大樹の笑い声が浴室に響いた。「……お嬢様。おかゆいところは、他に――ございませんか」

 うーん、とあたしは唇に指を添え、言ってみた。「襟足と、髪の毛を中心に、してもらって構わないかしら」
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