おれが、おまえを、可愛くしてやる。

◆#21. 浅葱蓮二、浸る。

 いつも馴染みの激安スーパーで食材を手に取る。……ってあああ。幸せ。

 おれは幸せでーす、と、世界中に向かって叫びだしたい気分だった。……望海と離れたときは辛かった。なによりも、退職したときが一番辛かった。……望海の気持ちに整理がついていないことは、おれは、分かっていたし……少なくとも、保育園時代からの、家族みたいな幼馴染みが自分に実は惚れてる、と聞かされて動揺しない女の子はいないだろう。おれだって……。

『彼女』は、特別な存在だった。けども――いまは、望海が一番。

 きみと出会ってからの日々はきらめいていて……ジュエリーボックスのなかのように輝いていた。幸せだった。

 だから――離れなきゃならない、と思っていた。きみがひとりになって……自由になって、考える時間が必要だと思った。

 確証なんかなかった。おれが離れてから誰かとくっついたら……なんて思うと気が気ではなかった。

 加藤純平のことが好きなのに、おれという縛りのせいでくっつけないんだったらそれこそ気の毒……とも思ったのだが、本当のおれは、分かっていた。加藤純平はきみにとって特別な存在――だけれど、恋人にはなりえない。
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