醜い私が美貌の聖女になったら、危険な恋をして国が滅びた。
 室内に漂う香木の香りが鼻をくすぐり、窓の外の風がカーテンを揺らす。
 その揺れさえ、まるで緊張を告げるかのように感じられた。

 エリシアは眉ひとつ動かさず、セドリックを見つめた。
 孤島で彼が自分に言った「皇帝になったら皇后にする」という言葉。それも結局、彼女を思い通りに動かすための方便にすぎなかったのだろう。

 実際、帝国に戻ったら、彼女をサミュエル皇帝に差し出し、自分は利益になる令嬢と結婚するつもりに違いない。
「ふっ、冗談ですよ。私が九歳も年下の子と婚姻を結ぶなど⋯⋯」

 エリシアが前言撤回しようとすると、セドリックは言葉を遮るように跪き目の前に身を低くした。

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