醜い私が美貌の聖女になったら、危険な恋をして国が滅びた。
 所有物に傷をつけるな、と言っているだけだ。
 遠くで誰かが喋っているような感覚に、エリシアの意識はふわりと浮いた。

 耳鳴りがし、玉座の間の空気が濁っていく。
(もう、どうでもいい)

 その時だった。
「ユーイン国王陛下。少し、よろしいでしょうか」

 低く、よく通る声。
 柱の影から、黒衣の男が静かに姿を現した。

 ブレイク、いつの間にかパトリスの補佐官となっていた男だ。
 人を滅多に信用しないユーイン国王が、珍しく彼を手招きする。

 ブレイクは一礼して近づき、国王の耳元で何かを囁いた。

 短いやり取り。それだけで、ユーインは満足そうに頷く。
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