あと30日で、他人に戻るふたり
彼は少しだけ目を細めて、私を見ていた。

「……なにがそんなに気になるの?」

その聞き方が、少しだけ予想外だった。ずっと流して聞いてたくせに、肝心なところは知りたがる。

私は一瞬だけ言葉に詰まる。

「気になる、というより。……落ち着かないんです」

ぽつりと出た言葉は、自分でも思っていたよりも弱かった。

「知らない人と同じ部屋で寝るのも、嫌だし」

言ってから、しまったと思う。

知らない人、って。違う表現もあったのに。
思いっきり目の前にいるのに。


彼は一瞬だけ視線を外して、それから小さく息を吐いた。

「……ひと部屋、そっちにあるじゃん。そこ、穂村さんが寝室として使ったら?」

あっさりと、そう言われた。

「え?」

「俺、どこでも寝れるから。明るくても、音がしてても気にしない」


先にリビングの奥にある部屋に行ったのは彼の方だった。
私は慌てて後ろをついていく。

間取り図にあった、六畳の部屋。
窓もあるし、日当たりも良さそうではある。しかも、ちゃんと収納のクローゼットも備え付けてある。


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