あと30日で、他人に戻るふたり
3日目 “おやすみ”は言えない
三日目だというのに、朝はまだ慣れない。
洗面所が混み合い、譲ろうとしたり譲らなかったり、意図せず身体がぶつかる。
「あっつ!…だからこの髪の毛のやつ、もう少し違うところに掛けられない?」
また、彼がヘアアイロンを手のどこかで触ってしまったらしい。
イライラしたような顔で振り返られた。
私はまだ入念にパックを貼り付けている最中だった。
「だってこの洗面所、引っ掛けるところがそこくらいしかないんですもん」
「ここもなんか買うか…」
朝から収納を考え始めているので、「今じゃない!」とぶった斬る。
「一ヶ月しかいないのに?まだ買うんですか?」
「その一ヶ月をストレスフリーに生きるため」
「お金、もったいなくないですか?」
「金ならあるんだよな」
一生に一度は言ったみたいセリフを、なんてことないようにさらっと言う。
こちらも朝からちょっとだけイラッとしてしまった。
パックが終わったので、洗面所から廊下に出てリビングに戻ろうとして足を止める。
「……昨日、何時に寝たんですか?」
私の問いかけに、彼は洗顔フォームを泡立てながら首をかしげた。
「……時計、見てない」
「目の下、クマありますよ」
「あーほんとだ」
鏡で自分の顔を確認している。けれど、自分の顔色や体調に興味はなさそうだ。
「まあ、起きれたから大丈夫」
彼はそう言って泡の中に顔を突っ込んでいた。
泡を流す水の音を背に、私は先にリビングへ戻る。
テレビをつけて、なんとなく天気予報を眺める。
いつも通りの朝のはずなのに、ひとりじゃないだけで少しだけ違う。
キッチンに立って、軽く朝食を用意する。
……あの人、またパンかな。
••┈┈┈┈••
洗面所が混み合い、譲ろうとしたり譲らなかったり、意図せず身体がぶつかる。
「あっつ!…だからこの髪の毛のやつ、もう少し違うところに掛けられない?」
また、彼がヘアアイロンを手のどこかで触ってしまったらしい。
イライラしたような顔で振り返られた。
私はまだ入念にパックを貼り付けている最中だった。
「だってこの洗面所、引っ掛けるところがそこくらいしかないんですもん」
「ここもなんか買うか…」
朝から収納を考え始めているので、「今じゃない!」とぶった斬る。
「一ヶ月しかいないのに?まだ買うんですか?」
「その一ヶ月をストレスフリーに生きるため」
「お金、もったいなくないですか?」
「金ならあるんだよな」
一生に一度は言ったみたいセリフを、なんてことないようにさらっと言う。
こちらも朝からちょっとだけイラッとしてしまった。
パックが終わったので、洗面所から廊下に出てリビングに戻ろうとして足を止める。
「……昨日、何時に寝たんですか?」
私の問いかけに、彼は洗顔フォームを泡立てながら首をかしげた。
「……時計、見てない」
「目の下、クマありますよ」
「あーほんとだ」
鏡で自分の顔を確認している。けれど、自分の顔色や体調に興味はなさそうだ。
「まあ、起きれたから大丈夫」
彼はそう言って泡の中に顔を突っ込んでいた。
泡を流す水の音を背に、私は先にリビングへ戻る。
テレビをつけて、なんとなく天気予報を眺める。
いつも通りの朝のはずなのに、ひとりじゃないだけで少しだけ違う。
キッチンに立って、軽く朝食を用意する。
……あの人、またパンかな。
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