遼くんは泣き顔がお好き。
「なんすか宮尾センパイ。
ノートにコーラこぼしてますけどぉ」
「え…うわっ?!本当だっ、やべえシワシワになる!」
豪快に倒したコップから容赦なくコーラがこぼれてテーブルを汚していく。
ふきんふきん、と辺りを見渡した瞬間目の前にすっと白い手が差し出された。
「これどうぞ」
あたしたちを見下ろしていたのはファミレスの制服に身を包んだクラスメイトの姿。
茶色のボブヘアにつり目のその顔はたしか、
「あれ、江波さん?ここで働いてたん?」
そうだ、江波さんだ。
ほぼ話したことはないけどたしかに同じクラスの女の子。
グループで固まっている方ではなくて、どちらかと言うと1人で行動していることが多い印象の子だ。
そのせいで、ちょっとだけ親近感が湧いていた頃もあったっけ。
宮尾くんの言葉に頷くと、手早くふきんで拭いてくれる。
あっという間に綺麗になったテーブルを見てよし、という風に頷くと、さっさと厨房に帰って行った。
「すげぇ、あっという間に片付いたよ」
「江波さん手際いいなぁ、動じてなかったし」
「かっけぇ」
たしかに、かっこよかった。
あたしもバイトしたらあんなふうにテキパキと動けるようになるんだろうか。
…あたしはバイトする前に、勉強しないとまずいか。
目の前に広がる数式を前に頭痛がしてくるのを感じた。