片思いをする彼の瞳に片思いしてしまった私。そう、この恋は実らない。
 王女殿下に片思いをする護衛騎士。
 社交界の令嬢たちの間では、もう有名な話だ。

 二人には誰も聞いたことはないものの、彼の瞳を見ていると誰もがすぐにこの話は本当なのだと納得してしまうほど。

 そんな熱い視線で、彼はいつも殿下を見ていた。

 面白くもない日常の中で、馬鹿げたことだとは思いつつも、いつしか私も彼の恋の行方を追いかけるようになってしまった。

 もちろんこの恋が、叶わないと知っていてだ。

 貴族間の結婚などに、恋愛感情はない。
 それは私と私の婚約者においてだけではなく、それは普通のことだった。

 貴族の結婚は義務であり、基本的には親たちが家門の利益などを優先して考えた結果でしかないから。

 だからだろうか。
 恋をする彼を見ているだけで、なぜか自分も満たされているような錯覚に陥ってしまったのは。

 でもきっとそれは私だけではないだろう。
 いつだって二人が一緒に現れると、令嬢たちは黄色い声を上げていたのだから。

 みんな彼の叶わない恋を応援しながらも、二人の恋模様を夢見る時間だけが幸せだったのだ。

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