片思いをする彼の瞳に片思いしてしまった私。そう、この恋は実らない。
 今すぐ消えてなくなりたい、というのはまさにこのことなのだろう。

 あまりの醜態に足を進めずにいると、私の存在に気付いた彼に声をかけられてしまった。

「急に具合が悪くなったと嘘をついて逃げ帰ってしまったけど……」

 本当なら、親友だと言って下さる王女殿下にきちんと説明して、謝罪をすべきだった。

 だけどあんなことを考えていた自分があまりに恥ずかしすぎて、どうしても打ち明けられなかったのだ。

「はぁ」

 私は顔を覆っていた両手をどける。
 これだけ悩んで後悔しても、相変わらず私の表情筋は動こうとしない。

 こんな顔で謝罪をしても、余計に迷惑かもしれないわね。

 だけど、殿下からどうしても話したいことがあると言われている以上、早めに日程を決めて登城しないと。

 そのためにもまず、一番面倒くさい用事を終わらせないとね。

 急ぎ仕度を終わらせると、短いノックのあと侍女が入室してくる。

< 6 / 52 >

この作品をシェア

pagetop