探偵の日記 村田連続殺人事件

始まりは探偵事務所から

 探偵事務所の中は、古びた机と革張りのソファがあり、壁には時代遅れの時計が静かに時を刻み、書棚には事件ファイルと推理小説が無造作に並んでいる。
 窓から差し込む午後の日差しが、埃混じりの空気を淡く照らしていた。
 そんな事務所の隅で、私はソファでうつ伏せになって寝てたらしい。インターフォンの音で目が覚めた。
「はーい、こちら本田探偵事務所です。」
 助手の今井美空が代わりに受けてくれる。
「急にお訪ねしちゃってごめんなさい。南凪沙というものです。」 
「少々お待ちくださいー」                      
「あっ、わかりましたー」
 インターフォンの相手との会話が終わると、美空はチラリと振り返りこっちを見た。
「瞳さん、依頼ですよ。早く起きてください。」
「はーい。」
 私は体を起こし、伸びをした。今日はどんな事件が待っているのだろう。
 服のシワを伸ばし、髪の毛を少しだけとく。
 私は準備ができ、美空にグッドサインをして、合図を出した。

 美空がゆっくりとドアを開けると、背が高いが華奢で黒髪をまとめた女性がいた。私はというと、逆に背が小さめで目は大きい方だ。
「こんにちは。」
「初めまして、急にお尋ねしてしまい申し訳ございません。」
「いえ、そんなことありません。とりあえず中に入って下さい。」
 すいません、と言いながら彼女は中に入ってきた。
 美空は私の前に彼女を案内する。
「あなたが探偵の本田さんですね。こんにちは。」
「ええ、探偵の本田です。で今日は何か?」
 美空が小声で『先生、敬語』と言う。まあ気にしない。
「私、村田麻夏さんという方の元で働いている南凪沙と申します。実は、今週の日曜日に主の村田麻夏様の誕生日パーティを催します。よければお越しいただければと思いまして。」
「私でよければーどうして急に?そので何か事件でも起きるの?」
「分かりません。でも麻夏様が『私はもう殺されるから』、そう言ってたんです。理由は何度尋ねても教えてもらえなかったんですが。」
 南は顔を下に向ける。私は美空と顔を見合わせた。少し嫌な匂いがする。
「そう、分かった。じゃあ行くわね。」
「ありがとうございます。時刻と場所と電話番号はこちらに書いております。何かあればご連絡ください。」
 そういい、南は白い封筒を渡した。
「分かった。」
「それではまた。では失礼いたします。」といい、南凪沙は探偵事務所を出ていった。
 なんだか嫌の予感がする。
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