5月の雪が止む頃に、君が本当の笑顔を取り戻せるように。


『あ、あのっ! 皆さん、そろそろ休憩しませんか……? 今日は日差しも強いですし、しっかり水分補給しましょう!』


コートに響き渡ったのは、必死に声を張る海緒の声だった。

いつもなら俺が周囲を見て出しているはずの合図。
ハッとして視線を巡らせると、肩を上下させて限界に近い部員たちの姿が目に飛び込んできた。

……やってしまった。

自分の焦りと苛立ちに飲み込まれて、周りの状況すら見えなくなっていた。

キャプテンとして、エースとして、最低だ。


「……悪い。みんな、休憩だ」


絞り出すような声でそう告げると、
部員たちは安堵したようにベンチへと引き上げていく。

俺は一人、足元に転がったボールを見つめたまま、コートの真ん中に立ち尽くしていた。

申し訳なさと、空回りし続ける自分への情けなさで、地面に吸い込まれてしまいそうだ。

その時、長い影が俺の視界を遮った。


『……翔先輩も、少し休憩しましょう。顔、真っ赤ですよ。この炎天下の中でこんなに自分を追い込んだら、先輩が倒れちゃいます』


ゆっくりと顔を上げると、そこには心配そうに眉を下げた海緒がいた。


「……」


言い返す言葉が見つからず、俺はただ黙って立ち尽くす。


『翔先輩が倒れたら、誰が心配すると思ってるんですか』

「……?」


親か、それとも部員か。そんな言葉を予想していた俺に、彼女はまっすぐな瞳を向けたまま、静かに、けれど熱を込めて続けた。


『部員の皆さんや先生、親御さんはもちろんですが……マネージャーは、誰よりも近くで皆さんを見てるんです。私が、一番に心配してしまいます。……だから、自分をいじめないでください』


海緒の言葉が、熱を持った体に冷たい水が染み込むように、じわじわと広がっていく。

あの日、「助けてくれた」と言ってくれた彼女が、今は俺の心を守ろうとしてくれている。

「一番に心配する」という言葉の重みが、荒れていた俺の鼓動を、不思議なほど穏やかに鎮めていった。
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