ムギ
「それで?どうするんだ?提出期限、とっくに過ぎてるぞ」

冷房の効いた職員室にて、犬山真莉(いぬやままり)は担任の視線にダラダラと汗を流していた。彼女の前には今一番見たくない紙「進路希望調査表」がある。

「したいこととかはないのか?家族の人と進路のことは話したのか?」

担任の言葉に真莉は目を泳がせ、「えっと〜あの〜」としか言うことができない。担任は大袈裟なほど深いため息を吐いた。

「もう一度よく考えるように」

紙を突き返され、真莉は肩を落としながら職員室を出た。その途端にムワリとした熱気に体が包まれる。窓の外では蝉が大合唱をしていた。

「ハァ……」

真莉は白紙の「進路希望調査表」を見つめる。進学するのか。それとも就職するのか。真莉の中で答えは何も見つかっていない。

「ああ〜!!もう!!」

もどかしさや苛立ちから真莉は声を上げ、心が落ち着く場所へと駆け足で向かう。二階の奥にある空き教室。ここが真莉が所属する軽音部の部室だ。
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