私が一緒に暮らすのは、人気ゲーマーでした

イケメンと同居?!

わたし、川瀬(かわせ)なの。
どこでもいる地味〜な中学2年生。
今日はクラス替えだったのだんだけど、案の定友達はできず……。

今年もボッチ確定かな。
体育でペアを作る時の、余った私を見る先生の視線と言ったら……思い出すだけで申し訳なくなってきたよ。

がっくりと肩を落としながら、家に帰る。
あぁ……今日もお母さんいなかったっけ。

私の家はお父さんが訳あっていなくて、お母さんは仕事一直線!!って人。
だから私のことなんてちっとも考えてないんだろうな…。
私の気のせいだといいんだけど。


そのとおり、というように私の家は、静まりかえっていた。お母さんまた、洗濯物片付けてない。
お仕事忙しいんだろうな。


そんな事を思いながら、わたしは靴を脱ごうとした。
…ん?
なぜか玄関に男の人のものであろう、革靴が置いてるんだけど…。

ドッキリ…?って思ったけど、わたしみたいな普通の中学生にそんなことする番組があるわけないし。

あれ?、と私は首をかしげる。
この家には私とお母さん(実質いない)しか住んでないのに…。

むむ?と靴を観察してみたけど、
名前が書いてある訳でもなく。幼稚園児じゃあるまいし、しょうがないよね…。

ていうか、これはなんなの?
ドッキリでもなくて、幼稚園児(?)でもないし、お母さん
の靴でもないんだしさ。

ますます謎が深まったけど、
おそるおそる靴を脱いでリビングの扉を開けようと、ドアノブを握る。

その時、リビングからなにやら物音が聞こえた。
―物音?
わたしはチラッと足元を見る。
そこには確かに誰かの革靴があった。

ということはつまりこの物音は革靴の主ということじゃ…。

私は玄関に違和感がないかチェックする。
ーうん、大体は家を出たときと同じな気がする。


とりあえず開けるか……。
いざってなれば通報すればいいし、ここにいたら何も出来ないよね!

私はドアをおそるおそる開ける。
物音の主はクマがはっきりで、髪をセットしていない今にも消えそうな儚い系のイケメンだった。

―めっちゃイケメン、ていうかこの人誰?
もちろんわたしには兄弟がいるわけないし、お母さんからいとこがいるって話も聞いたことがないんだけど?!

私は情報量の多さに耐えきれなくて思わず
「え……?!」と声を上げた。
謎のイケメンはそんなわたしを不思議そうに見つめながら


「よろしく…」とだけ言うのだった。


✽ ✽ ✽

「えっと……なんで貴方はここにいるの?
ここは私の家なんだけど?!」

わたしは彼に理由を説明して!とグイグイ迫る。
彼はあとずさりしたあと、視線をそらしてボソッとつぶやく。

……なんて言ったの?全然聞き取れなかった。
それくらい彼の声はか細くて、分かりやすく言うと〝()〟って感じ。

意思疎通が出来ないけど、不審者(ふしんしゃ)?をむやみに追い出すわけにも行かないよね……。
ワケありだったらなんか申し訳ないし。なんかワケありっぽいし。

「もう1回、大きい声で言ってくれますか?」

彼に歩みよるように、わたしができるかぎり最大限の笑顔で聞いてみる。

だけど彼はふぃっと顔を背けたまま。
聞いてるんだから言って欲しいんだけど?!

……彼に聞くのは諦めよ。
ていうか、とりあえずお母さんに聞いてみなきゃだよね!
わたしはスクバからスマホを取り出す。

スマホに表示されたメッセージの長さを見て思わず「え」と声が出る。
長い文にトラウマがあるけど読まなきゃいけないし、
読むか。

そこには
『お母さんの友達が出張で1年家を空けるんだけど、息子が生きていけるか心配でうちで暮らすことになったから。
なの、よろしくね』といつもの淡々とした口調で書いてあった。


「お母さんの友達?!うちで暮らす?!」
家中に響いたわたしの声に、イケメンも思わずチラっとわたしを見る。

「聞いてないのか…?」
彼は普通そう言うのは一週間前にいうだろ、みたいな視線でこっちを見てくる。

そりゃそうだよ!当日に言う親なんてうちの親くらいだよ!……ほんとに頭に入ってこない、お母さんってば何考えてるの。

わたしは頭を悩ませた。というかさっきお母さんに送った
「その人なんて名前?」ってメールの返事は返ってこないし。

既読ぐらいはつけてよ!
はぁ……お母さん忙しいのはわかるんだけど最低限の情報くらいは教えてほしいよ。

イケメンだけどさ……。イケメンだけど誰か知らないし。

お母さんを頼ることは諦めて、自分で行動しなきゃ……。
わたしはスマホから目をあげて彼のほうをまっすぐ見る。

「ていうか名前!!」
不思議そうにわたしを見ていた彼はビクッと肩をはねた。

「え……?」
「名前教えてください!名前も知らない人とは暮らせませんし!」

わたしは、いきおいそのままに彼に詰めかける。
後ずさった彼は困惑(こんわく)したような顔をしながら、
(かなえ)…。穂高(ほだか)叶だよ」 とつぶやいたのだった。


名前はわかったけど……
ほんとにこのイケメンと同居するの?!

―こうしてわたしとイケメンは1年間ともに暮らすことになってしまったのでした。








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